第1部 1章 ダイナ

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第1部 1章 ダイナ

「ま、雅樹さん!」 「雅樹でいーよー。さん付けされて呼ばれるのあんまり好きじゃないんだよね、なんか老けてるみたいに感じるじゃん?」 よくわからない理由でさん付けで呼ぶことは却下されたけれどそもそも私のすぐ目の前を歩く彼は一体何者なんだ。 いや、ちゃんと雅樹って名前を名乗ってはくれたけどもさ!「危ないよ?」とかなんとか言って強引に手を聞いて否応なしにどこかへ連れ去るあなたも十分危ない人ですよ!? 脳内で雅樹…くん。への文句を考えつつチラリと目の前を歩く彼をもう一度よく見る。 3センチほどしかないけれどヒールを履いた私より頭一つ大きな身長に触り心地の良さそうなアッシュブラウンの髪。それに離島の海には似合わなすぎる白くて綺麗な肌。芸能人か!ってくらいいろいろ整いすぎていませんか?この人。 じーっと長いこと見つめていたら視線に気づいたのか雅樹くんがこちらを振り返る。いきなり振り返るもんだからもちろん目と目はばっちり合う。 雅樹が持つ海の蒼と同じくらい綺麗なその瞳にまたしても少し見惚れていると彼はその瞳を細めてからアイドル顔負けの笑顔でニッコリと笑いかけてくる。 いや、むしろ芸能界な入っていなくても職場とかでアイドル扱いされるタイプ。私とは違う人種だっ!! 「そう言えば俺は名乗ったけどキミの名前を聞いてなかったよね?なんて言うの?」 突然顔を近づけてきて名前を聞かれて息が止まる。 覗き込んでくるその瞳から視線を逸らしてから 「波埼 陽莉(はさき ひかり)です…」 と名乗る。 雅樹くんはそれを聞いて満足そうに頷くともう一度前を向いてすたすたと歩き出す。一体いつまで歩くんだと思い始めた頃、大きな一軒家が見えてきた。 雅樹くんはその家の敷地内へ躊躇することなく入ると私にも入れと言わんばかりに引っ張ってくる。 「いやいやいやいや、人様のおうちに勝手に入ったら犯罪ですから!むり、ダメ、ノーセンキュー!」 若干混乱していて自分でも訳のわからないことを言っている自覚はあるがこの際聞き返さないことを祈ろう。そんな心配をよそに雅樹は一段と強い力で私の手を引き抱き寄せたかと思うとそのまま入って来た扉を勢いよく開ける。 「ちょおっ!!!」
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