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前日、うっかりお酒飲めますよなんて言っちゃったもんだから康晴さんに地酒をたくさん勧められ、智志さんに煽てられ飲み過ぎ…
気絶するように爆睡していたのにカーテンの隙間から差し込む朝日に無理矢理起こされた。仕方なく布団の横に投げっぱなしだった携帯を見るとすでにお昼近くだった。
慌てて飛び起き軽く身支度だけ整えて部屋を出ると淳子さんが雑巾片手に廊下を掃除しているところだった。
「陽莉ちゃんおはよう。昨日はよく眠れた?」
「淳子さんおはようございます…。ごめんなさい、朝ごはん…」
きっといつまでたっても降りてこないからなかなか仕事が進まなかっただろうに淳子さんは全く気にするそぶりを見せずに笑ってくれる。
「パパが飲ませすぎたのがいけないんだから気にしないで良いのよ。お昼は作ってないんだけど朝ごはんの残りが冷蔵庫にあるから体調が平気だったら食べてね。」
ウインクをして再び掃除に戻る淳子さんを見ているとこの場所に来た甲斐があるなぁとつくづく感じる。淳子さんと康晴さん本当におしどり夫婦って言葉がとても似合う。
素敵だなぁと思っていたところで嫌なアイツのことを思い出してしまい頭を振る。
「せっかく素敵な場所に来たのにもったいない!切り替えろ!わたし!」
勢いよくほっぺたを叩いて気合いを入れてからさっそく淳子さんがとっておいてくれた朝ごはんをいただきに台所へ向かう。
玄関の前を通りかかったところで扉の外から雅樹くんの笑い声が聞こえてきた。
気になったので出っ放しだったサンダルを勝手に拝借して玄関の扉を開ける。
「・・・っ!」
「あっ、ダイナってば!」
いきなり水をかけられたかと思うと外にいたらしい大きな犬が濡れた体で尻尾を振りながらこっちに向かってくる。
「ダイナってばおすわり!」
抱きつかれる…と思い反射的に目をぎゅっと瞑ったら雅樹くんの声が聞こえてくると思った感触がいつまでもやってこない。
目を開けると雅樹くんが自分の服が濡れるのも構わずダイナと呼ばれた犬を後ろから抱えてメッと怒っていた。
「えーっとその犬はどうしたの?」
「昨日いた美愛ちゃんいたでしょ?そこんとこのワンちゃんなんだけどウチの前でウロウロしてたから連れてきちゃった。」
えへへーと笑う彼はわたしより幼く見えるが今気にするべきところはそこじゃない。
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