第1部 1章 ダイナ

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「それってもしかしなくてもダメなんじゃ…」 「大丈夫だよ!もう康晴さんに伝えてあって夕方に引き取りに来るらしいから!」 ねーってダイナに向かって雅樹くんが笑うとダイナもワンッ!と元気に吠えて体を擦り寄せている。 ゴールデンレトリバーかな?金色の体毛は水に濡れてキラキラと光ってる。 その場しゃがみこんで怖がらせないように下の方から手を伸ばして顎の下を触ってあげると気持ちいいのか目を細めてハッハッと息を漏らす。 「ダイナくん?って言うのね。人懐っこいし大人しい良い子だね。そう言えばなんで濡れてるの?」 ダイナにこれでもかと手や腕を舐められながらたずねると雅樹くんはちょっと目線をそらしながら 「あー…、それは暑そうだったからお水を上げようとしたんだけど蛇口ひねった瞬間にダイナが喜んで飛びついてくるからホースが暴れちゃって…」 よく見てみれば彼の着ていたTシャツや髪の毛からはさっき抱きついただけではそんなに濡れるはずがないのにポタポタと雫が落ちている。 「夏だからっていつまでも濡れたまんまだと風邪ひくよ!待ってて、今タオル持ってくるから…」 タオルを取りに行くために勢いよく立ち上がるとまだ昨日のお酒が抜けきっていなかったのか身体がふらついてしまう。 「・・・っ」 「危ないっ!」 視界が回ってよろけて倒れそうになったところを雅樹くんが受け止めてくれる。 「ごめ、ちょっとまだ昨日の残りが…」 まだピントの合わない視界で上を向いて謝るけれど彼は首を横に振ってから 「気にしない気にしない。おれもお酒飲んでぶっ倒れたこと何回もあるし陽莉ちゃんが倒れて怪我しなくて良かったよ。」 顔を覗き込むようにしてそう言うと彼は私に肩を貸してくれて玄関に座らせてくれる。そのまま履いていたサンダルを脱いでどこかへ行ったかと思うとタオルを2つ手に持って戻ってくる。 「ハイ、蒸しタオル。暑いかもしれないけど右胸の下のあたりをあっためると楽になるはずだよ。」 わざわざ作ってきてくれたのかまだ湯気が出てるタオルを渡してくれる。「ありがとう」と受け取ったのは良いけれど彼はニコニコと笑いながらそこにいる 「あの、ごめんね?流石に見られながらだと服捲るのは…」 気まずそうに伝えると言葉にしなくてもわかるくらい慌てて玄関の扉の外に出て行く
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