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そんな佳梛に香月が困ったように笑い、大きな身体を折って、佳梛の肩口にこつんとその額を乗せる。
甘えるような仕草がいつも自信たっぷりな香月には珍しい。
なんて思って為されるがままになってしまっていると、独り言のように呟かれる。
「分かってるのか、佳梛。どれだけ自分が魅力的な女なのか。」
何を言って、、、。
「そんなお前とこうして二人きりでいて、今、俺がどれだけ浮かれているのか。」
この男は今、何かの罰ゲームを受けてそんなことを言い出したりしたんだろうか。
でなければ馬鹿じゃないかと思う。。
佳梛なんかを煽てたりなんかして。
「ならホテル行く?」
楽しかった今日の御礼に行っても良いかなって思う。
いつも助けて貰ってばかりで。
他に佳梛が香月に返せるものなんかないから。
なのに、その瞬間、香月が固まってしまう。
「……。」
ん?
あれっ。
もぞっと、香月の頭が動いたかと思うと佳梛の肩にかかった髪の毛ごと、首筋にガブッと噛み付かれた。
「痛いっ。」
吸血鬼か!!この男(ー~ー#)
慌てて引き剥がそうとしたけれど、それより先に、また香月に抱きすくめられてしまう。
「いい加減にしろよ、佳梛。俺が今どんな気持ちで我慢してると思ってるんだ」
そんなこと言われても佳梛に分かる理由がない。
「前にも言ったが、俺は佳梛を大切にしたいんだ。」
確かに前に聞いた。
あの時は鼻に噛みつかれたっけ。
でも、あれは佳梛に同情したからだと思ってたのに。
「本気だったんだ。」
心の中で呟いたつもりが、声に出てしまってた。
香月に鋭い目で睨まれる。
反射的にびくっとなった佳梛に香月は小さく嘆息して、視線を緩めた。
綺麗な顔の人に睨まれると、凄みが倍増して怖いんだって。
「ホントにお前は何にも分かってない。」
香月がその気持ちを切り替えるかのように小さく頭を降る。
「お前がどう思っていようが俺にとって、普段から可愛くて仕方ない佳梛が、今日はいつになくお洒落して来て更に可愛いんだ。」
いつかの羞恥プレイの再現なの、これは!
何て思う佳梛を置いてけぼりに香月は真剣な顔で、言葉を続ける
「その上に仕事場では無愛想で仏頂面なくせに、今はこんなに隙だらけで、俺は理性を保つのが精一杯だと言うのに。」
香月は佳梛からそっと視線を外し、さっきかぶりついた首筋をそっと撫でる。
「頼むから煽るなよ。」
その言葉は掠れて小さく溢れた
香月の腕の中はあんまり居心地が良すぎて、駄目だ。
その腕の中から出られなくなってしまう。
そうしてまた梶原のように放り出されたりでもしたら、佳梛はもう立ち直れない。
身に染みて分かってるはずなのに、
この腕の中から出たくない。
もう少しだけこのままで居たいと願ってしまう。
もう少しだけ。
あともう少しだけって。
それから、香月は佳梛をボロアパートまできっちり送り届けて、頬にキスひとつして解放した。
次のデートの約束を取り付けてから。
やっぱりそれ以上、手は出してこなかった。
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