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「真瀬理事長って、いつもここにいますけど、理事長業務って、そんなに暇なんですか。」
最近の佳梛と香月と牧田くんとの3人で過ごす裏庭のお昼休み。
最初は香月のもつ圧倒的な支配者のオーラにのまれっぱなしだった牧田くんも、ここでは院内と違いユルい香月に慣れてきたのか、少しずつ牙を剥くようになってきた。
だからって。
理事長に暇なんですかとは、なんて直球。
佳梛だって思っていた事とはいえ、もう少し言葉を選ぶべきでは、と思う。
さすがにじろりと睨まれてた。
「さすがに暇ではないが。
私だって休憩は必要だろう。何より、」
そこで一旦言葉を切って、香月は熱を宿した瞳で佳梛を捕らえて言う。
「ここに来ること以上に大切なことはないからな。」
最優先事項なんだと、なんともとぼけた科白を大真面目に言ってのける。
呆れてものが言えないとは、まさにこの事を指すんだなと思っていたのに。
「僕だって!
ここに来ることは大事だと思ってる。」
いや、あの…。
牧田くんまで、何を言い出すのか。
こんな人通りのない、しかも寂れたベンチと灰皿がおいてあるだけの裏庭に来ることが、そんな大切な訳がない。
またもや香月のあの無言の圧力で睨みつけられ、牧田くんはさすがにたじろいで佳梛に助けを求める。
「沢渡さんだってそうですよね!?」
「あー、うん。」
いくら鈍感な佳梛でもそこは空気を読んで合わせる。
けれど、それで騙されるような香月ではないようで、うろん気な眼差しを向けてくる。
「よく言う。お前はせいぜい昼飯を病院の職員に会わない外で、静かに食べたいってぐらいだろう。」
「あれ、なんで分かったの?」
ほらみろって顔で香月が牧田くんを睨む。
「沢渡さ~ん(>o<")」
「あ、と。ごめん。」
つい本音が出てしまった。
牧田くんの情けなさ気な顔に思わず笑みがこぼれる。
そんな佳梛を見てか、香月と牧田くんが佳梛を見つめたまま固まってしまった。
背中がもぞもぞする。
あの…。
そんなに見つめられると、人の視線を浴びるのに慣れていない佳梛は、すっごく居心地が悪いんですが。
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