招かれざる客

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香月に連れていかれたのは、こじんまりとした温かい雰囲気のカジュアルレストラン。 香月のことだから、どんなゴージャスな所に連れていかれるのかと、びくびくしていたんだけれども。 その空間の居心地の良さにほっとする。 安堵して、けれども香月の顔を見てまた緊張する。 「めずらしいな、佳梛、今日は百面相か。」 香月にからかわれても、何も言い返せない。 今までは精神状態がぎりぎりの時に会ってばかりいたから、他の事なんて考える余裕もなかった。 香月とこんな普通の状態で二人で会うなんて初めてで、一体どうしたらいいのやら。 しかもデートだなんて。 裏庭でのお昼休みのようにと思っても、外で会う香月はまた雰囲気が違っていて別人のようでうまくいかない。 要するに香月のその圧倒的な存在感と破壊的な格好良さで、思考も佳梛の存在も、全て飲み込まれてしまう。 今まで香月とどんな話をしてたんだっけ? そんなことすら分からなくなる。 「もしかして、緊張してるのか?」 してますよ。 とっても! 「いつもの昼休みの延長戦みたいなもんなんだから、普段通りにしてろよ。」 「……。」 全然違いますけど。 今日の香月はなんだか大人の男性に見えてきて。 いや、大人の男性ってことは抱かれたんだから嫌と言うほどよく分かってるんだけれども。 じゃなくて気持ち的に、改めて意識させられてしまったような感じで。 ただのミネラルウォーターを飲む姿ですら、様になっていて、 なんだか落ち着かなくなる。 思わずごくりと生唾を飲み込んでしまう。 「なんだ、飲ませて欲しいのか。」 色気をたっぷり含んだ目で、意味ありげに告げられては、一度だけ抱かれたとき、ベッドで口移しにミネラルウォーターを飲まされたことを思い出し、さらに落ち着かなくなる。 「ち、違う。」 「真っ赤だよ、佳梛。」 「誰のせいで、、、。」 「もちろん俺のせいだな。」 おたおたする佳梛を見て、香月は満足そうに微笑んだ。
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