第1章

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『あー。すまん。皆。今回は外れだったようだ』  ヤマカンがカメラが戻っていることに気が付いたのか声のトーンを落として画面に向かって話し出す。画面の後ろ。ヤマカンの肩越しに何かが動いたのが見えた。 『次こそは必ず犯人を捕まえてやるぜ!』  テンションを上げて話すヤマカン。屋根の蓋通気口がぼとりと床に落ちた。ヤマカンは気が付いていない。にゅっと。細い足が伸びてきた。次に腰。腕。覆面を被ったマスク。  そっと音もなく降りてきたソレの手にはゴルフクラブが握られていた。 『次回も必ず見てくれよな!』    ヤマカンが人差し指を立てて画面に決めポーズをした瞬間。ゴルフクラブが振り下ろされて画面が真っ赤に染まった。 「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」  私はその画面を見て叫びだしていた。全身がブルブルと震える。 「……確かに刺激的な動画ね」  平然とした顔で美奈子先輩がつぶやく。 「先輩……何を」 「このヤマカンって人ね。本名山本武治っていうの」  無表情に無機質に呟く。私は何も言えない。 「私の元カレ」  ぐるりと先輩の首が回って私と目が合った。 「そして。あなたの今カレよね?」 「なんで……」  私は震える足をばたつかせながら先輩から距離を取ろうとするがうまく体が動かない。 「それはどの、なんでなのかしら?」  口を動かそうとしても口が上手く動かず言葉にならない。 「なぜ体が動かないのか? かしら? それは紅茶に筋弛緩剤を入れておいたからよ」  にこやかな笑顔で言う。 「どうしてそんな事をするの? かしら? それはヤマカンを殺したのは私だからよ」 「それともなぜ、生放送なのに私がここにいるの? かしら」 「その動画は生放送じゃなくて録画なのよ」 「なぜ? 殺したのかしら?」 「あなた達が浮気していたのを知っていたからよ」  先輩が赤いゴルフクラブを手に取ってくる。私の目の前に先輩の影が落ちる。 「つまり。そういうこと」
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