第1章

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 生放送で結構過激な事をするので最近人気が出てきた動画シリーズだ。すぐに動画が再生される。ちょうど生放送が始まる時間だった。 『やぁやぁ。皆、元気にしてたかい? ヤマカンだ。今日も過激で刺激的な動画をお送りしていくぜ。今日は本当に驚きの動画をお送りするぜ。実は最近俺の部屋に泥棒が侵入しているみたいなんだぜ。なんでそんな事がわかるんだって?  俺は実はこう見えて几帳面な正確なんだ。椅子の場所やタオルの位置やテーブルの位置まできっちりと決めてるんだ。でもここ一週間ほど椅子の位置やテーブルの位置がわずかにずれているんだよ。俺は一人暮らしだし、ここ最近誰かを家に呼んだ事はない。  それにも関わらず物が動いているんだ。誰かがこの家に入っていることは間違いない。だから、俺はこの部屋をスマートフォンで俺が出かけている間一日中録画しておいたんだ。そうしたら、今日も帰ってきたらまた物が動いていたから間違いなく犯人が録画されているはずだぜ。今日はその動画を視聴者の皆と見ようってわけだ。何なら犯人逮捕の瞬間まで見れるかもしれないぜー。じゃあ、動画のほう行ってみよう!』  軽快な掛け声で動画の再生が始まる。私は思わず美奈子先輩の顔を見る。美奈子先輩は無表情に画面を見つめていた。  動画はヤマカンがスマートフォンを設置しているところから始まっている。部屋からヤマカンが出ていった後、動画を早送り再生していく。 『ほーら。もうすぐ犯人が入ってくるぜー』  ヤマカンの勢いのある声とは裏腹に動画には何の変化も現れない。最初は陽気に話していたヤマカンの声も次第に怪訝な物へと変わってくる。長い間変化のない動画が流れ、ヤマカンの舌打ちの声が聞こえてきた頃。玄関の扉が開いた。 『来たぜ! ほら! 犯人の登場だー!』  しかし、玄関から入ってきたのはヤマカン本人だった。にやにやした表情でスマートフォンを手に取ったところで動画が終わった。結局、泥棒だという犯人は現れず、ただヤマカンが一人で勘違いしていたようだ。 『なんだよっ! つーかなんで誰も映ってないんだよ!』  ヤマカンが声を荒げて叫ぶ。動画から室内のカメラに切り替わりヤマカンが怒っている顔が映し出される。
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