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「・・・・・・せ、と」
『好き、だよ。大好き・・・・・・橘』
電子音が響く。
ディスプレイに通話終了の文字が出る。
・・・終了。
嫌だ。
そんなの・・・嫌だ!
人ごみの中に突っ込む。
かきわけて押しのけて、必死に姿を探す。
「せ、と・・・・・・瀬戸っ」
目の前が滲む。
だけど、足を止めたくなかった。
あきらめたくなかった。
別れを告げようとしていたのは俺だ。
あいつが言わなくても、こういう結末だった。
でも、知らなかったんだ。
――これほどまでに、苦しくて、悲しいなんて。
「・・・う・・・っ、く・・・・・・」
こんなことなら、観覧車の中であいつを抱かなきゃよかった。
もう、あいつの感触が、ぬくもりが、
俺から離れないのに・・・
「・・・っ、せ、と・・・・・・瀬戸っ」
携帯が壊れそうなほど強く握りながら、
人知れず、涙を流し続けた。
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