完璧男子に類なし The last decision

17/29
前へ
/29ページ
次へ
「・・・・・・せ、と」 『好き、だよ。大好き・・・・・・橘』 電子音が響く。 ディスプレイに通話終了の文字が出る。 ・・・終了。 嫌だ。 そんなの・・・嫌だ! 人ごみの中に突っ込む。 かきわけて押しのけて、必死に姿を探す。 「せ、と・・・・・・瀬戸っ」 目の前が滲む。 だけど、足を止めたくなかった。 あきらめたくなかった。 別れを告げようとしていたのは俺だ。 あいつが言わなくても、こういう結末だった。 でも、知らなかったんだ。 ――これほどまでに、苦しくて、悲しいなんて。 「・・・う・・・っ、く・・・・・・」 こんなことなら、観覧車の中であいつを抱かなきゃよかった。 もう、あいつの感触が、ぬくもりが、 俺から離れないのに・・・ 「・・・っ、せ、と・・・・・・瀬戸っ」 携帯が壊れそうなほど強く握りながら、 人知れず、涙を流し続けた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加