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もちろん、それを見逃す園長先生ではなかった。
「残念ね。お子さんも親御さんも、瀬戸先生のファンが多いのに」
「えーっと、その、そんなこともないと思うんですけど」
「あるわよ。あら、引き止めてごめんなさいね。早く帰ってあげてください」
「は、はあ・・・」
園長先生はニコニコしている。
否定らしい否定もできなかったけど、ま、いいか。
いい人、であることに、間違いはないんだから。
家について、ソファの前のテーブルに、買ってきたものを並べる。
コップ、お皿、お椀、スプーン、フォーク、箸・・・
一つ一つ置いていくと、しだいに実感がわいてくる。
俺は、橘と一緒に住むんだ。
橘と離れたくない。ずっと一緒にいたい。
その願いが・・・叶うんだ。
玄関のドアが開く。
足音が聞こえて、橘の姿が見えた。
「あ・・・」
やっぱり照れくさそうな橘。
その態度が少し可愛くて、だからこっちから言うことにした。
「おかえり!」
「・・・た、ただいま」
その一言を言えることが、
その一言を聞けることが、すごく嬉しい。
これからも、ずっと言いたい。
ずっとずっと・・・・・・言いたい!
この部屋にはきっと、
橘のものが増えていく。
それを見に行くのが、買いに行くのが、
今からとても・・・楽しみだ。
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