女とくだんの男

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「御主人と待ちあわせですか?」  その歳格好からして既婚者であると思っていました。そして、そのとおりですと肯定された後、「いいですね!」の一言を云うつもりだったのですが、現実は、全く予想だにしない展開となりました。 「これから男の人と会うのですが、一緒にいてくれませんか?」  その物言いに、どことなく哀切を感じました。もっとも、男女の痴情が絡んだ事柄であるとの察しはつきましたが。しかし、その物言いのお陰で無下に断われなかったのです。  そうして、暫くして、くだんの男が来ました。その男を認めるや「この人よ」と女性は指さし彼に私を示しました。その仕草がナチュラルであるがため、違和感なく、近くに留まっていたタクシーに男共々それに乗り込むことができました。その男性は見るからに堅気、少し蔑む言い方をすれば、女々しい感じのする人でした。一方、暴力沙汰になってもという私の不安は払拭されました。
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