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「座ってて、僕の同居人は仕事中だから挨拶もなくて悪いけど…」
ダイニングテーブルの椅子を引いて着席を促して、電気ケトルでお湯を沸かす。
「お邪魔してすみません。どうぞお構いなく…」
「温かいハーブティーでも良いかな?」
「ありがとうございます」
だいぶ若そうだがきちんとした子だ。
マグカップを差し出すと、不器用な感じで取っ手を掴む。指が長すぎるのだ。
「金田部長は僕のことをなんて?」
いつもは向かいに置いている椅子を脇に持ってきて、斜めの位置に座ると聞いた。
「超美人のセフレだと…」
呆れた。金田には願望で話さないで欲しいと言ってやらねばならない。
「僕は恋人一人としかしないし、金田部長とは一度もしたことないよ」
安原の目にみるみる涙が溜まっていく。
「金田さん、超美人セフレがいるから僕とは付き合わない。僕とは、たまに違う人とヤリたかっただけの、一夜限りだって言ったんです」
泣くまいとしているようだったが見事に失敗していた。
鼻をすするも、目尻から一滴こぼれた。
「でも、そんなはずないんです。だってそうでしょう? 本気で一夜限りにするつもりだったら最初から本名も職業も偽るでしょう? 金田さん、凄く僕のことも聞いてきて、自分のこともたくさん話してくれて…、僕の料理も食べてくれたんです」
安原の矢継ぎ早の言葉にたじろぎながら金田の気持ちを考える。
喫煙所でのあの感じは、本気で安原に惚れているとみて間違いない。
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