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玄関に行って、裸足のまま土間に降りると、ドアに頭を寄せて耳を澄ます。
彼が廊下で謝っているようだ。
田口はそっと扉を開いた。薄く開いて覗くと、彼が隣の扉を必死な顔で叩いていた。
「芽依ちゃんごめん、ごめん、お願い、帰るから荷物…」
必死になって謝る彼がこちらに気付いて真っ赤になった。
「芽依ちゃん、お願い、このままじゃ帰れないから!」
彼は白いシャツ一枚だけの姿だった。
田口は扉を大きく開けて、廊下に出た。
つい彼の下半身を凝視してしまう。
すらりとして筋肉質な脚は寒さに鳥肌が立っている。
黒々とした下生えの中にはしっかり上を向いてそそり立つ立派な男性自身。
(俺の倍はありそうだな…。あんなの見せられたら処女は失神するだろ…)
寒さにもこたえていない巨根に感心してしまう。いきり立つそれは太股の白い肌によく合うピンク色だった。
「芽依ちゃん、お願い、せめてズボンだけでも…」
何度目かの呼び掛けで、扉の脇の窓の格子を通して、靴が落ちて来た。
彼は靴を拾うと下半身の前を隠した。
ビジネスバッグ、コート、スーツのジャケット、ネクタイ、ワイシャツ、スラックス、パンツの順で落ちてくる荷物を拾っては抱えこむ。
すべて抱えあげたのを見て、田口は手招きした。
彼は一瞬躊躇したが、すぐに駆け込んできて頭を下げた。
「すみません、着替えたらすぐに出ます」
田口は扉を閉めると和室に行き、ボディシートとハンガーを持って戻った。
「足を拭いたらソファーで休みなよ」
パンツをはいてもその下のモノは固くふくれたままのようだ。
このまま帰るのは辛いだろう。
「2、3時間したら始発も出る。スーツはカーテンレールにでも掛けといたらいい」
彼はうつむいて、田口の差し出す物を受け取った。
「ご迷惑おかけしてすみません…」
消え入るような声を背に和室に戻ると押し入れから夏物の上掛けを引き出して、ソファーにおき、エアコンのスイッチを入れて少し設定温度を上げた。
彼が入ってくる気配を背中に感じながら襖を閉めると布団に倒れ込んだ。
彼が襖を挟んだ向こうにいる。
経緯がなんんであれ嬉しかった。
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