406人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
金田の精力がどれだけだか知らないが、田口と同年だ、若い子との差を感じて怖じ気付いたのかもしれない。
有馬は、この二年で約10歳の歳の差を田口に感じるようになっていた。
まだまだあくなき欲望を溢れさせる有馬に対して、田口は週一で行っている古武道の稽古の甲斐もなく、日頃の徹夜も響いているのだろうが、長時間性交するのが難しい。一度イクと疲れですぐ眠ってしまう。
そんな田口が、有馬に飽きられないかと不安に思っていることを知っている。
「金田部長がどう思っているか僕が適当なこというべきじゃないんだけど…」
金田に恋人ができ、自分への迷惑行為が止むならありがたい。ここ連日の口説きがこの安原が原因ならば尚更、安原には頑張ってもらおう。
「僕の同居人も金田部長と同い年なんだ。かなりオッサンだよ。すぐへたれる。だからね…これは想像なんだけど、若い君がすぐに満足できなくなって自分から離れてしまうんじゃないかって、怖がってるんじゃないかな?」
「つまり?」
「君が好き好き言って纏わり付いたらきっと拒みきれないと思うよ」
安原は有馬から目を反らして、田口の仕事部屋の方を見た。
有馬が話をしながら目が向いたせいだろう。
「有馬さんは彼氏さんに飽き、ますか?」
「飽きないよ! 絶対! だって、彼を気持ち良くしてあげられるのは僕だけだしね。でも彼は心配してる。僕がもっと精力旺盛な人とやりたいんじゃないかって」
「1回だけで満足できますか?」
「ん?」
田口は1回射精したら潰れるが、有馬は1回射精したくらいで済むことなどまれだ。田口の射精をコントロールして、2度、3度挑むのが常だ。田口をドライでその倍はイカせているはずだ。
と、思い違いに気付く。
有馬が金田が抱きたい人と決めつけたことがあったように、安原は有馬が抱かれたい人だと思っているのだろう。
「あ、僕がタチだから」
「え?」
「君、見かけで決めつけたら、物事みあやまるよ」
金田が自分がネコであることを、他人の口から暴露されたくはないだろうと思って、それ以上は言わないことにした。
最初のコメントを投稿しよう!