28人が本棚に入れています
本棚に追加
2頭立ての侍衛官の馬車が過ぎると、騎馬の近衛兵に囲まれた大公夫妻の乗る4頭立ての馬車がやってくる。
続いて大公太子ステファーノ夫妻の馬車、大公太子の子供達(と言っても皆成人している)の馬車が数台、その他の公子、姫君は家族で一台、前大公弟エルビス公爵夫妻の馬車が一台、そして一番最後が大公妹ペルーラの馬車。
大馬車列ではあったが、あっという間に過ぎてしまう。
お目当ての姫君はプラチナブロンドの巻き毛がちらりと見えただけだったが、クロードは満足だった。
三年前、2度だけ言葉を交わした姫様。
あれから一度もお会いしていない。普通にしていれば全く会うことのない別世界の姫。
今はまだ近づくことなど出来ないが、いずれ近衛となって側に仕えるつもりだった。
そして、この夏こそ近衛になるための第一歩を踏み出すのだ。
アルフ商隊、炎の商人アルフを納得させ、彼の傭兵団に入れてもらうのだ。
傭兵団で剣士としての力量を認めてもらい、騎士団入隊の推挙状を書いてもらう。
アルフ商隊は昨夜遅くに宿入りし、今朝早くにお屋敷に行ってしまったので、まだアルフ本人には会っていない。
入団の審査がいつに行われるかわからないが、今日明日にはあるのではないかと踏んでいた。
クロードが中庭に戻ると、東側の通りから荷馬車が2台入ってきた。
先頭の馬車からアルフが降りてくる。
よく晴れた日差しにアルフの髪は燃え上がる真っ赤な炎のように輝いた。
クロードは大股で歩みよって声をかけた。
「おかえりなさいませ」
クロードの満面の笑みに、アルフは苦笑いで応えた。
「また背が伸びたな」
「成長期ですから!」
元気いっぱいに応える。
アルフは少し目を細めてクロードを見た。
「稽古が終わったら部屋に来なさい」
「はい!」
いよいよ審査の時が来る。クロードの胸が高鳴る。
クロードには誰にも打ち上げられない絶対の秘密があった。
それは18も年上のアルフに恋してると言うことだ。
アルフ商隊の傭兵団に入ることは夢の第一歩であったが、大好きなアルフと一緒の旅ができるという喜びもあるのだった。
ペルーラ姫にも恋をしていたが、アルフへの想いのタイプは逆だ。
最初のコメントを投稿しよう!