28人が本棚に入れています
本棚に追加
キリエルはマウンタニア皇国内で真しやかに語られている癒者の能力について語り、クロードを驚かせた。
癒者は男でも男の精から赤子を作り出せるのだという。
「無理だと言いましたよね」
後ろからミランダの声がした。
程なく平原の向こうに森が現れ、昼前には森の街道にたどり着いた。そして日が暮れ、馬がバテるまで進んだ。
ミランダはさすがに馬を全回復させて強行する力はなかったが、少しは馬の回復に体力を使い、夜明け前には出発すると言った。
ミランダが食べるだけ食べて休むのを確かめると、クロードは組み手の型や剣舞をして時間を過ごした。
キリエルはマンドリンを奏でる。
「熱心だな」
キリエルが不意にマンドリンをおいた。
たき火からまだ火のついていない枝をとるとクロードに突き付けた。
「たまには付き合おう。長いのは無理だから、第三の2」
アルフから習った剣舞。
休憩の度に身体が鈍らないよう、型や剣舞をするようにしているが、誰かと合わせるのは二ヶ月ぶりだ。
町で剣を合わせた時には自分より劣ると感じたキリエルの剣技だったが、舞は丁寧で迫力もあり、キレがあった。
クロードは楽しくなった。
上気したクロードの顔はたき火の明かりで輝いて見える。
キリエルは舞の終わりの礼をすると、しばしクロードの顔を見詰めた。
「アルがお前を好きな理由がわかった気がする」
「え」
急に言われてドギマギする。
「アルフ様は…僕を好き…と?」
クロードに聞かれてキリエルは首を傾げた。
「…言ってないな」
「アルフ様が誰かを好きになるなんて想像つきません」
苦笑し、少し肩を落とした。
「だよな…」
キリエルも肩を落とす。
「でも、アルフ様はキリエルのこと、大事ですよね」
クロードにはキリエルがそんな風に肩を落とす訳がわからない。
「アルが大事なのは姪っ子だけだよ」
「姪…」
本当に自分はアルフの事を知らない。
キリエルはしばらく首を傾げてから聞いた。
「アルが…、俺を大事だと思うか?」
「じゃなきゃ身をていして庇ったりしないでしょう?」
クロードが驚いていうと、キリエルはとても嬉しそうに、そして寂しそうに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!