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いつものように夜明けに馬車を出した。
食料も人も大幅に減ったせいか軽快に進む。
馬車の軽さに対してクロードの気持ちは沈んでいた。
ミランダとはほとんど会話をしなかったし、出会って十日もしないキリエルには腹の立つことしか思い浮かばないが、そのキリエルでもいてくれたら一人よりましだと思った。
ミランダの追っ手に一人で立ち向かうかも知れない不安よりも、人気のない街道で独り言に耳を傾ける人すらいないのが淋しかった。
ミランダにはもう会わないだろう。ミランダが何に追われ雇主に何を届けるのかは知らない。
しかし任務を終えれば沿海州に還るのは間違いないだろう。
アルフ商隊に入って、いずれはエスメラルダの都に上り騎士団に入るつもりのクロードとこの先、縁はない。
ミランダと旅してアルフが癒者を連れていない理由がわかった。治癒能力は高いが長距離をつれまわすのには向かない。
ミランダは強行しない時でもいつでも許容量を超えて体力を消耗していた。傷ついている者を見て放って置くことはどんな場合にあってもなかった。
それが癒者の使命だと言って。
帝都には城門が閉まる寸前くらいに着いた。
しかし中には入れなかった。
物々しい警備隊数人に詰め所に連れて行かれ、馬車は馬車屋が取りに来て、荷物ごと持って行ってしまった。
「お前はどこから来た」
「ヴェールです」
「親は」
「祖父母に育てられましたがもう他界しました」
ミランダと準備していた嘘の身の上。
「未成年だろ?」
さほど背の低い方ではないが、体型と顔のせいで幼くみられるのはいつまで続くのだろう。
「16です」
ムッとしていう。
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