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 周りと同じ高さの頃、見るもの全てが美しかった。 誰よりも大きく、高くなってもやはり美しかった。   仲間が居なくなっていく度に、景色が変わっていく度に、自分の無力さが悲しくて、目を覆った。 何も見ないように深く眠った。    久しぶりに目を覚ました朝。自分が何者であるかを忘れていた。 私は小高い丘に居た。土に見える木漏れ日は私が落としたものらしい。 周囲の木々は整然としていて、どこか素っ気ない。 見知らぬ風景に嫌気がさす。 眼下には同じような家が並ぶ町が広がっていた。 ひとつの窓に目が止まる。 小さな白い花瓶に赤い花が一輪。 根から離され、土から離され、生きているのかも判らない花に目を奪われた。 美しいと思うはずもないのに、美しいと思ってしまった。 白色に赤い花びらが映え、私に何かを思い出させようとする。
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