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閉店間際の茶屋で、遠くから来たのかいと女将に訊かれる。曰く、こんな時間にここらで一服しようなどと思うのは、これから通る道の怖さを知らないか、よほどの物好きか、どちらかだ――というわけだ。
「盗賊団が出るんだってな」
狭上の問いかけに、女将は首をすくめて、真っ黒な液体を紙の容器に注いで寄越した。
「おにいさん、悪いことは言わない。次の出口で降りたほうがいいよ」
店の外には十人ほどの人影が屯していた。男も女も交じっていて、大抵は安全服を着ている。ヘルメットをしている者もいる。体格はいいが、目つきはよくない。女将の言う、よほどの物好きといったところか。めいめい手に紙コップを持ち、狭上と同じく煮詰まったコーヒーを飲んでいた。
彼らも言うことは同じだった。無事に旅を続けたいのなら、日が暮れる前にさっさとこの高速道路を降りること。その後は一般道で目的地へ向かうか、あるいは明朝、日が昇ってから戻ってくるか。いずれにしてもこの先の道は、これからの時間、初心者が単独で通り抜けられるような生易しいところではない、と。
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