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「親が危篤でも夜の高速には乗るなって、教習所で聞かされねかったかい」
一団の中でも年長らしき男――と言っても狭上よりいくらか若い、せいぜい三十過ぎといったところだろう――が、少し怒っているような、あるいは嘲っているような、きつい北国訛りのある口調で言った。
「聞かされたよ。嫌と言うほど」
「だべ? 自分が死んだら元も子もねえ。まして、おめえ、あの車じゃなぁ」
品のない笑い声が立つ。彼らの視線の先には、駐車場の隅にぽつりと停まっている、黒のコンバーチブルがあった。狭上の乗ってきた車だ。
遠目に見ても傷みの目立つ車体に、みすぼらしく古びた幌。賊はおろか、強風から乗員を守ることすら覚束なく見える。
ちなみに乗員のほうの出で立ちは着馴れたブラックジーンズにレザーのジャケットと、車よりはいくらかマシだが、物々しい安全服に比べれば、やはり少々心許ない。
荒くれ者たちの車は、大型車用のスペースを占領するように停められていた。西日を浴びている貨物トラックは大小合わせて七台ばかり。コンテナに記された会社名はばらばらだが、互いの積荷を守るために組まれた運送隊に相違なかった。
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