1日目

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 都市部なら列車や飛行機輸送の便があるし、港町なら水路が使える。しかし地方の内陸部となれば、物流は未だに自動車に頼らざるをえなかった。  となればもちろん、一般道による輸送だけではどうにもならない。ただでさえ長距離だというのに、大雨や雪が降れば通れなくなる峠道など、当てにならないからだ。  とは言え、数十年前に無料化されて以来著しく荒廃したハイウェイの利用を、もはや大手の運送業者は引き受けようとしない。それで彼らのような命知らずが、高い代金と引き換えに、商品の運送を請け負うようになった。依頼する企業にしてみれば、平和な有料道路のころのほうが、かえって安上がりだったかもしれない。盗難に備えて商品にかけておく保険料も、馬鹿にはならないだろう。  キャラバンの運転手たちは見た目こそ無頼だが、やはり専門業者らしく、それなりに考えて走っているらしかった。彼らも日が暮れ切るまでには、一般道へ降りるつもりでいるという。ただ、刻限までに積荷をそれぞれ指定の町へ届けるために、せめてフカガワまではこのままハイウェイを走る必要がある。ここから最大の難所を越えるための、最後の休憩場所がこのSAなのだ。 「しかし、スナガワにも茶屋があるだろう?」 「へっ、あるにはあるさ。けど、あすこはもう、行きがけに一服するような場所じゃねえ」     
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