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「高速賊の溜まり場にでもなってるのか」
「まあ、そんなところさ」
「噂の〝赤烏〟か?」
その名を聞くと、男はわずかに眼の色を変えた。狭上の顔をじろじろと無遠慮に眺めまわしてから、急に口元を卑猥に歪め、
「はん。お目当てはオアシスか。そんなら、一般道へ出ろと言っても聞かねえやな。まあ、せいぜい烏どもに目を付けられねえようにすれや。何があっても、高速道路じゃ誰も助けちゃくれねえからよ」
何しろみんな、自分の身を守るので精一杯なんだ――そう言って、男は毛深い手で紙コップを握りつぶし、壁際へ放り投げた。形ばかり置かれた屑籠の周りに、即席麺の器や空き瓶が散乱している。傍らには白と赤の自動販売機が二台並んでいたが、どちらにも故障中の紙が貼られていた。
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