1日目

6/34
前へ
/134ページ
次へ
高速賊(ハイエナ)の溜まり場にでもなってるのか」 「まあ、そんなところさ」 「噂の〝赤烏(あかがらす)〟か?」  その名を聞くと、男はわずかに眼の色を変えた。狭上の顔をじろじろと無遠慮に眺めまわしてから、急に口元を卑猥に歪め、 「はん。お目当てはオアシス(・・・・)か。そんなら、一般道(シャバ)へ出ろと言っても聞かねえやな。まあ、せいぜい烏どもに目を付けられねえようにすれや。何があっても、高速道路(ここ)じゃ誰も助けちゃくれねえからよ」  何しろみんな、自分の身を守るので精一杯なんだ――そう言って、男は毛深い手で紙コップを握りつぶし、壁際へ放り投げた。形ばかり置かれた屑籠の周りに、即席麺の器や空き瓶が散乱している。傍らには白と赤の自動販売機が二台並んでいたが、どちらにも故障中の紙が貼られていた。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加