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遙は生まれつき身体が弱い。
いわゆる虚弱体質と言われる状態だった。
小学生の頃なんか、ガリガリで顔色は真っ青だった。
食が細くて偏食家で、本当に何も食べない奴だった。
そんな遙を大切にしていた幼馴染の彰人は料理人を目指して料理を始めた。
「遙が何でも食べられるように、美味しい料理をつくるんだ!」
あの時の満面の笑みの彰人がやけに可哀想に見えた。
だから俺は別の方法で遥の食わず嫌いを矯正した。
「こんなものも食べられないのかよチービ」
「チビじゃないもん!」
「食えねーくせに。野菜が怖いんだろ!」
「こ、怖くないもん!」
今考えれば、馬鹿なこと言ってたな...。
遙は意外と負けず嫌いだったから何とか売り言葉に買い言葉で食べるようになったが。
俺の矯正と彰人の努力、どっちが効いたのか分からないままだが、遙の偏食はなくなった。
その後も身体が弱いことには変わりないが、何とか健康状態を維持して今も生活できている。
最初は幼馴染が可哀想で始めた矯正も、少しずつ遙と言い合いをするのが楽しくなって、関係ないことまで口出しするようになっていった。
その頃だったかな、彰人と結婚すれば遙と一緒に居られるからって1度だけ「好きだ」と嘘をついたのは。
その一言のせいで彰人も遙も変わってしまった。
彰人は以前よりも俺を遙に近付かないよう強く言うようになったし、遙に近付くと物凄く警戒される。
遙は...まるで彰人みたいに振る舞うようになった。きっと、彰人が何か言ったんだろう。
そのせいで俺は遙と無駄な接触ができず、例え話したところで彰人のように飄々と躱されてしまう。
...そして中学1年になってから、俺が異常だということに気付かされた。
周りの奴らは彼女ができたり、女の身体に興味深々になっていった。
それに対して、俺は女が嫌いだった。
泣けば許してもらえると思ってすぐ泣くところ。
見た目が可愛ければ何しても許されると思っていると思っている傲慢さ。
何より、思わせぶりなことを言えば男が寄ってくると思っているところが嫌いだ。押し付けがましい。
俺は異性愛者が苦手だし、理解できないと思って長いこと友人関係の事で悩んだ。
結果、同じ同性愛者の彰人としか仲良くできないと分かったんだが。
そう悟った年の終わり頃、中学1年生になった遙がいじめにあっていると彰人から聞いた。
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