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また小さい時のようにガリガリになった身体。
食事も摂れなくなってしまったらしい。
小学生の頃伸ばし始めた髪は乱雑に切られ、持ち物はほとんど落書きだらけだった。
俺はすぐに相談しなかった理由を聞こうとしたが、遙は全く聞く耳を持ってくれなかった。
「放っておいて」としか答えてくれなかった。
彰人は聞き出したと言っていたが...俺に対しては本当に頑なだった。
かっこ悪い話をすると、実はその件で泣いた。
小さい頃、あんなに俺に懐いてくれていた遙が、酷く傷ついてボロボロになっても俺には話してくれない。俺には何か、心を開けない理由があるんだろうとその時に痛感した。...そして大きな間違いをしていたことにも気付いた。
俺は遙が好きだったんだ。
年が5歳も離れているが、そんなことは関係ない。
傷付いた遙を抱き締めたかったが、やんわり言葉で制された。
そして、いじめの件は彰人の助言で遙が自分でなんとかできたと聞いた。
俺は何もしてやることができなかった。
俺が関わらないうちに、遙の問題は解決して生活も安定していく。
それから俺はこれまで以上に遙に突っかかるようになった。
以前まで警戒していた彰人は何故か止めなかった。
遙が躱すの上手くなったからなんだろう。
そして少しでも遙との縁が切れないよう、彰人と同じ専門学校を卒業し、座学の中でも経営学が得意だった俺は、カフェを経営することを決めた。
でもそれは俺の為じゃない、バーテンダーに憧れた遙の為だ。
アイツがバーテンダーになったとして、働く場所が必要なんだ。
俺は店舗欲しさに資金を貯めた。苦労は多々あったが、俺のことより遙をとにかく大事にしたかった。
俺の思惑通り、バーテンダーの修行が終わった遙1人の力では店を手に入れらなかった。
高卒で酒の知識をつけただけだからな。
夜使わない店を持つ俺の元へ助けを求めてきた。
俺との時間が増えるよう条件を付けてOKした。
俺が思い描いていた事が叶った瞬間だった。
同居が始まってからも、自分でも止められない法螺を吹きながら、遙と関わりを無理矢理持とうとする俺は、真実を知っている者からはどれだけ滑稽に見えるんだろうか。
俺の「女を抱いた」という話を聞いて、彰人は呆れただろう。『女』という性に嫌悪感を持っているこの俺がなんて馬鹿なことをと思っただろう。
遙には俺のこんな計算高く汚い面を知られたくない。
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