最後の日のはずだった

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「慎ちゃん、今日こそは許さないけどいいね?」 「酔った勢いじゃねーか!仕方ないだろ!」 「26歳にもなって!!もう少し恥じらえ!!」 僕を意識を失った夕方、目を覚ますと兄さんが来ていた。 流石に着せられたのだろう、今はちゃんと服を着ている。 兄さんが過保護なのはいつもの事だから慣れているけど、慎ちゃんが可哀そ 「外に飲みに行ったら酔って女も何度か抱いてんだ、1回くらい許せって!」 「兄さん殺って、今すぐ。」 「今のは慎吾が悪い。」 そして兄さんは拳を振りかぶった。 まぁ殴ったところで力が弱いのは兄弟譲りだからどうにもならないんだけどね。 慎ちゃんは自室なのにも関わらず、般若と化した兄さんに追いやられ、部屋の角にいる。 ちなみに慎ちゃんは本名を福田慎吾(フクダケンゴ)と言う。昼間は女性客や子どもに「お兄さんかっこいー!」と言われているカフェの店長だとは思えない。 対して般若と化した顔を慎ちゃんに向けつつ僕に心配そうな表情を見せる兄は本名を菅田彰人(スガアキト)と言う。大手ファミレスの社員をしているらしい。 ...店出せば絶対流行る程の料理の腕前なのに...。 「もう!やっぱりここに住まない方がよかったんだよ!」 「利害の一致だし...」 「26才児は黙ってて。 ね?遙、これで分かったでしょ?お家に帰ろ?」 「...だけど...」 実家は困る!!! 実家は昔から僕が病弱だからと外部との関係を絶とうとしてくる!! そんなの無理!!!!!! それに、僕は自分にさようならをするんだ。 だから、家族の顔は見ない方がいい...。 「よし!わかった!!責任取る!!!!」 「黙っててって...、どうとるの?」 「遙、俺と恋人になれ!!!!」 「馬鹿なの?」 「遙、コイツは最初から馬鹿だよ。」 1回“間違い”を犯したから恋人になる? 僕はそんなの望んでない。 今まで我慢してきた分も相まって胸が痛む。 これまで自分を隠したり、泣かないよう我慢する度に僕は胸の痛みが現れている。 いつもの比じゃない痛み。 けれど胸を抑えないよう僕は踏ん張る。 兄さんは胸が痛まない。 僕は兄さんだ。 慎ちゃんが見ている時は兄さんなんだ。 「付き合うのも利害の一致なの?」 「ちげぇよ!」 「理由は?」 「確かに俺は間違えを犯したかもしれない。」 「...」 「でも昨日はちゃんと遙がいいって言ったんだぜ?」
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