第一章 都からの使者(1)

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 すると子どもたちの嬉々とした歓声が聞こえてきた。  そちらに目を向ければ、農水路で、この暑さに我慢出来なくなった下着姿の子どもたちが水遊びをしている。 「みんな気持ちよさそうね」 「――マリア様だっ!」  子どもの一人が気付けば、「マリア様! 一緒に遊ぼう!」と声を重ねて馬の周りを嬉しそうに走り回る。 「ごめんね。今は巡回の途中だから、また後で」 「えー。少しでいいからぁっ」 「こーら、みんな。マリア様の邪魔をしてはいけません。すみません。礼儀を知らなくて」  見かねた保護者たちが子どもを捕まえる。  マリアはにこりと微笑む。 「大丈夫です。子どもはそういうものですし。私も子どもの頃はここで遊びましたから」 「そうでしたねえ。心配するお家の方に水をかけるお転婆で……」  マリアは昔のことを言われ、頬をほんのりと染めた。 「そ、そういうことは言わないで下さい……っ」 「えー。マリア様、いけないんだぁ!」 「マリア様、悪い子だーっ!」  けらけらと子どもたちが笑う。 「昔はそうだったということです。みんなは親御さんを困らせないようにするのよ」  これ以上子ども時代の恥ずかしい想い出を語られては困るとばかりにつんと澄ましたマリアは馬腹を蹴り、逃げ出した。
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