第一章 都からの使者(1)

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 マリアの向かったのは果樹園を抜けた先にある王国直轄の警備基地である。  トルシア州のように豊かな地には、それを収める領主の私兵の他にこうして王国直轄の軍が置かれる。  と言っても三年前に王位を巡る内戦をジクムントが収めて以来、周辺諸国との関係も良好な現在としては人員もある程度押さえられ、百人程度のこぢんまりとしたものだ。  マリアが基地に向かうのも治安面の情報交換というのが表向きだが、実のところはただの世間話が主な目的と言って良かった。  しかし基地へ近づくと、常とは違う物々しい気配に手綱をぎゅっと引いた。 「誰だっ」  基地の門前に居並んでいた象牙色の鎧をまとった兵士たちが槍を構える。 (この人達……)  マリアはすぐに下馬した。
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