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「女?」
ぴりついた空気を瞬時に察し、マリアはこうべを垂れた。
「私はエリントロス伯爵家のマリア・デ・エリントロスと申します」
「エリントロス……?」
兵士は要領を得ない顔をする。
伯爵の位を戴いていても田舎貴族の知名度は無いに等しい。
「マリア様っ」
と、この基地に常駐している顔見知りの中年兵士が駆け寄ってくる。
「こちらはトルシア州のご領主様の娘さんです。病がちなお母上に代わってご領主として
の政務を代行されているのです」
若い兵士たちは槍の穂先を持ち上げた。
「そうでしたか。しかし、そのような方がどのようなご用件でしょうか」
「実は隊長様と治安についての情報交換を……」
中年の兵士はうなずく。
「そうでしたか。申し訳ございません。今現在隊長殿は別件にて手が空いておりません。日を改めて頂きたい」
「お嬢様、私が途中までお送りします」
「分かりました。お願いします」
マリアは「ご苦労様です」と若い兵士たちに頭を下げ、軽快に馬へ跨がった。
中年の兵士が馬の轡を取って歩き出す。
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