第一章 都からの使者(2)

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「――お母様。お加減はいかがですか」  マリアが母、エリントロス伯爵家の当主、アンネの寝室に入ると、二人の弟妹(ていまい)たちが顔を上げて、走りよる。 「お姉様!」 「姉上っ!」 「二人とも、食事中に席を立つなんてお行儀が悪いわよ」  一緒になって食事をしている弟妹に声をかける。  今年で十二歳を迎えた妹のセリノ、十歳の弟、カルロスだ。 「それから、みんなに無理を言ってお母様と食べるなんて。もっとエリントロス家の人間として相応しい行動を取りなさい」  二人は不服そうに唇を尖らせた。 「でも……」 「言い訳は聞かないわ。二人とももう幼児ではないのよ」 「マリア、良いのよ。私も賑やかな方が良いもの」  アンネが優しく言うと、「ね、お母様!」「母上!」と二人は得意げな顔をする。  マリアは二人の頭を軽くはたく。 「お母様も大変なのだから甘えないのっ」  二人は「お姉様がぶったぁ」「姉上が怖いよぉ!」と母親に(すが)り付く。 (まったく)  アンネもアンネで「よしよし」と頭を撫でる。 「二人とも。少し部屋を出ていて。お母様と大切な話があるの」  弟妹たちは少し渋い顔をしたが、「大丈夫。すぐに終わるから」というアンネの言葉に、「はあい」と部屋を出て行く。
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