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午後になると、マリアは弟妹たちの厳しい家庭教師になって勉強を教える。
しかしそれもこれまでそうであったようにすぐに飽きだした二人を椅子に座らせる為の追いかけっこの様相を呈するのが常だった。
と、セリノとカルロスを両腕で抱えるように取り押さえていた時、扉を叩く音がした。
「――はい?」
「お嬢様、少しよろしいでしょうか」
執事が顔を出す。
マリアは弟妹たちに「良い? ちゃんと目標の所までやっておくのよ」と無駄と感じつつ言いつけをして部屋を出た。
「実は外に王国軍が参りまして、お嬢様とお話しをと……」
「私と?」
過ぎったのは今朝のことだ。
あのことが上に報告されて何かしら問題の訴状にでも上がったのかもしれない。
「分かりました」
マリアはドレスの裾を持ち上げながら階段を下り、玄関を出た。
そこには使用人たちと共に待つ兵士の一群がいた。
「お待たせいたしました。マリア・デ・エリトロスです」
と、兵士たちの中から一人、軍装ではない青年が進み出てきた。
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