第一章 都からの使者(3)

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「マリア様、お久しぶりです」  マリアははっとする。 「……ヨハン、様?」  ヨハンは嬉しそうに目を細める。 「覚えていて下さいましたか」 「それは、もちろんです」 「随分とご無沙汰でしたが、マリア様はますます綺麗になられて」 「ヨハン様ってば馴れないお世辞を。お話しがあるそうですね。どうぞ中へ。供回りの方は……」 「この者たちは外で待たせます。二人きりで話したいことですので」 「分かりました」  ヨハンはジクムントの側近――。  それですぐにピンと来た。 「……もしかしてあなたがここにいらっしゃったから、基地の方が騒がしかったのですか?」 「ご迷惑をおかけしてしまいましたか。極力、騒ぎにならないよう配慮したつもりでしたが」 「そうではないんです。実は今朝、基地の方に出向いた時に妙に物々しかったので何があったのだろうと」 「左様でしたか。もし何かありましたらいつでも仰って下さい。すぐに対処いたしますので」  ありがとうございます、とマリアは頭を下げ、使用人たちに準備をするよう命じた。
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