第一章 都からの使者(3)

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 マリア達は中庭に設けたテーブルセットでお茶を飲む。  大きな古木の下、日射しが生い茂った葉っぱを通り、マリアたちに美しい木漏れ日を落としている。  枝が風に揺られるたび、木漏れ日が鮮やかに踊った。  お茶の支度が整うと人払いをして二人きりで向かい会っている。  ヨハンは周囲に目を向ける。 「ヨハン様、どうかされましたか?」 「こちらには初めて窺いましたが、とても良い所なんですね。自然が豊かで穏やかで、清 い。王都から参りますとそれを強く思います」 「気に入って頂いて良かったです。もしお時間に余裕がおありでしたら是非、農園の方にもご案内させて頂きます。――それでご用件とは?」 「陛下のことです」 「陛下の……」 「単刀直入に申し上げます。マリア様にもう一度王都へ……王宮にて陛下のお側にいて欲しいのです」  マリアは心の動揺を抑え、懸命に言葉を紡ぐ。 「陛下に何かあったのですか。お怪我をされたとか……」  ヨハンは首を横に振った。 「違います。陛下は(すこ)やかにされています」 「そうですか」
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