612人が本棚に入れています
本棚に追加
マリア達は中庭に設けたテーブルセットでお茶を飲む。
大きな古木の下、日射しが生い茂った葉っぱを通り、マリアたちに美しい木漏れ日を落としている。
枝が風に揺られるたび、木漏れ日が鮮やかに踊った。
お茶の支度が整うと人払いをして二人きりで向かい会っている。
ヨハンは周囲に目を向ける。
「ヨハン様、どうかされましたか?」
「こちらには初めて窺いましたが、とても良い所なんですね。自然が豊かで穏やかで、清
い。王都から参りますとそれを強く思います」
「気に入って頂いて良かったです。もしお時間に余裕がおありでしたら是非、農園の方にもご案内させて頂きます。――それでご用件とは?」
「陛下のことです」
「陛下の……」
「単刀直入に申し上げます。マリア様にもう一度王都へ……王宮にて陛下のお側にいて欲しいのです」
マリアは心の動揺を抑え、懸命に言葉を紡ぐ。
「陛下に何かあったのですか。お怪我をされたとか……」
ヨハンは首を横に振った。
「違います。陛下は健やかにされています」
「そうですか」
最初のコメントを投稿しよう!