第一章 都からの使者(3)

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 しかし、とヨハンは言った。 「私が心配しているのは心のほうです。陛下は何かに追われるように反乱分子を討伐されています。マリア様、陛下のことを世間では何と言っているかご存じですか」 「…………」  知っていた。  しかしそれをマリアは自分の口から言うのを躊躇われた。  ジクムントのことをよく知らない者ならばいざ知らず、自分のように少なくない時間を共に過ごした者が言うのは憚られるものだったから……。 「血まみれジーク」  ヨハンは躊躇いなく言った。 「陛下はわざわざ血に濡れる為に白い鎧を装着し、近衛兵にもそれを徹底させております。マリア様の知る陛下は、そのようなことに耐えられるような方でしょうか」
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