第一章 都からの使者(3)

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「……分かりません。陛下と離れてもう三年ですから」 「では最後の記憶の陛下は……」  マリアは首を横に振った。 「私も同感です。ご存じの通り陛下は本来、血を好むような方ではございません。王位に就いた者として必要なことを、成すべき事をなそうと無理をされている……私はそれを心配しています。  陛下は決して弱音を漏らされるような方ではありません。だからこそ余計、私の知らない所で苦しんでおられるのではないかと……。マリア様にとって王都が因縁の場所であることは重々承知しております。でも、陛下の為にどうか……」  そう、王都ヴァラクイナはマリアにとって因縁の地だ。  そこで父が暗殺されたのだから。  父、メンデスは当時、第五王子時代であったジクムントの唯一の後ろ盾だった。  下手人は未だ見つかっていない。
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