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「……陛下、兵の体勢は万事整ってございます」
誰をも寄せ付けぬ、触れれば切れてしまうような緊張感を漲らせるジクムントに、騎乗した将の一人が近づき、告げる。
短く刈られた黒髪に、女性を魅了すると評される日に焼けた細面――ジクムントの側近であるヨハン・マージェントである。
彼もまた主君と同様、白い鎧に身を包んでいた。
「遅いぞ」
ジクムントは呟き、空を仰ぐ。
戦というより午睡でも楽しんだほうが良いような、のどかな天気だ。
青空に数片の雲が泳いでいる。
もうすぐ太陽は中天に上ろうとしていた。
「陛下っ!」
そこへ伝令の兵士が馬を走らせてくる。ジクムントの前に出ると下馬して控えた。
「どうした」
ヨハンが伝令に応対する。
「ただいま城内より、ポラリス伯爵より降伏の使者が参りましたがいかが為さいましたか」
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