序章 戦火の古城

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 数刻後。  黒煙の筋が幾つも晴れやかな空へ昇らせている城内に、ジクムントは入場を果たした。  城外では数万の兵士たちが昂奮に目を輝かせ、頬を染め、勝鬨(かちどき)の声を高らかに上げている。  ジクムントはただ一人、その熱気とは無縁で、側近たちと共に縄目(なわめ)を打たれてうな垂れた男の前に進み出た。  ジクムントは口を開ける。 「ポラリス、久しいな」  白髪の男が顔を上げる。  最後に会ったのは半年前であったはずだが、中年ほどの(よわい)の男が今ではすっかり老いさらばえてしまっている。  宮中においてはしっかりと(くしけず)られていた髪は乱れきり、衣服は土埃(つちぼこり)にまみれて汚れていた。 「ジクムントっ! 貴様ぁっ!」  ポラリスは(しゃが)れた声を上げ、身を乗り出そうとするが、「陛下の御前であるぞっ!」と兵士に縄目を掴まれ、押しとどめられる。 「この恩知らずの若造めっ。一体誰のお陰で王になれた!? ダートマス様の温情があればこそ、お前のような人間が王になれたのだぞっ! それを、それをぉっ」 「貴様、無礼であろう――」  兵が怒鳴るのを、 「良い。言わせておけ」  ジクムントは押しとどめさせる。
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