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言われた通り手拭いにきっちり包んで持参したその鏡を、店主は白い手袋をした手でじっくり検分した。
「この鏡がどうかしたんですか」
「どうしたも何も、あんたこれ見た時何にも感じひんかったんか」
「はあ、特に何も」
彼は呆れ果てたという表情で肩をすくめて見せた。
「ほんまにあほやな。あんたみたいなんがおるからいつまでたってもおれがただ働きさせられるんやで」
「あのぉ、前から思ってましたけど、いくらなんでも失礼ですよね? そちらさんがうちの何を知ってるゆうんですか」
「何を知ってるて、そらあんたよりはいろんなもん知ってるに決まってるやろ、せやからここに相談しに来てるんちゃうんか。ほんまにええ迷惑やで」
思いっきり顔をしかめた加奈子を気にするでもなく、店主は手拭いに包み直した鏡を持って店の奥に消えていく。
「ま、これがあんたんとこ行ったんも何かの縁やろ。最後まで見届けていき」
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