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加奈子がただただ唖然としていると、彼はずいとビデオカメラを差し出してきた。促されるままに再生ボタンを押すと、先ほどの座敷と店主が映し出された。
彼は座布団の上に置いた鏡に向かって何やらぶつぶつと話しかけた後、さっと後ろに下がって正座をした。すると、バシッという音がした後、瞬きをするかしないかの間にそこには一人の女が座っていた。
真っ赤な着物を纏っており、真っ白な髪の下には異様に大きな目がぎょろぎょろと辺りを見回している。
――また随分と肥えたもんやなあ。ちょっと話しよか。
その異形の女はにたっと笑って何かを言ったが、声は聞こえなかった。ただ、店主の呆れたような声だけが響いている。
――鏡の持ち主に悪さしてるやろ。このまま去ぬなら見逃したってもええけど、どうする?
女は高笑いをしているようだった。大きく開いた口には鋭い歯が並んでいて、それが人ではないことが見て取れた。
――そうか。ほなまァ、諦めや。
店主がおもむろに羽織を脱ぎ、ずっと手につけていた白い手袋を外したところで、映像は唐突に砂嵐に見舞われた。おそらくはこの後にあの絶叫が響いていたのだろう。
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