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「嫌やわあ、心配させて悪かったなあ」
両足にギブスをはめられ車椅子に座らされている母は申し訳なさそうに笑った。
母さんが事故にあったと妹から連絡があったのは、昼過ぎのことだった。頑なに二つ折りの携帯電話を使い続けている加奈子は、普段は連絡に気付くのが遅くいろいろと後手後手になりがちなのだが、今回ばかりはすぐに気付けたのが良かった。
状況も分からぬまま慌てて会社を飛び出し駆けつけた京都府立医科大学附属病院で、両足の骨にひびが入っていたものの命を落とすような大怪我ではなく普段通り元気にしている母の姿を見てほっとし、加奈子はよたよたと病室の椅子に腰掛けた。
動かなければそれほど痛くないと笑う彼女は、急に暗い顔をして言った。
「それにしてもお父さんもタイミング悪いなあ」
「父さんおたふく風邪やったっけ? あれって大人もかかるもんなん?」
「大人がかかるとたち悪いゆう話やで。気ぃつけんとなあ」
実家でおたふく風邪に寝込む父は、専業主婦で現在育児真っ最中の妹に看病されている。
母親が病院に運び込まれた時には付き添っていたようだが、午後からは父の昼食を用意するために家に帰ったらしい。この大変な時にとぷりぷりしながら家の中を動き回っている姿がすぐに想像できた。
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