鏡のこと

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 次の日、加奈子は寝起きではっきりとしない重たい頭を抱えながら駅へと向かった。早朝だがホームには疎らに人がいて、彼女はいつも乗り込む車両の停車位置まで歩いた。  そしてふと、昨日の老婆の言葉を思い出す。早めに手を打たねば死人が出ると言っていたし、それがたとえ嘘だったとしても縁起が悪い。  何とかならないものかと考えながら足元の黄色い点字ブロックを眺めているとまもなく電車が参りますというアナウンスが入った。加奈子は壁に凭れていた身体を起こして一歩前に進んだ。  その瞬間、何かにとんと背中を押された感覚がした。  踏ん張ろうとするも足に上手く力が入らず、一歩二歩とふらふらと身体が揺らぐ。視界に広がるのはホームの下に広がる黒い線路で、これはやばいぞと頭の中で警鐘が鳴り響いた。  いよいよ頭から落ちるという時、横からぐっと腕を掴まれ、加奈子の身体にがくんと衝撃が走った。
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