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「実は、私の運気を見てほしいんです」
「それはお断りや」
店主はじろりと加奈子を睨みつけながらきっぱりと言った。中性的で美しい青年の口から飛び出すこてこての大阪弁はなかなかにパンチが効いている。彼が話し出した途端、繊細な花が似合いそうな儚げな青年像は霧散した。
「うちは見ての通り骨董屋や、占い屋とちゃう」
「それは・・・・・・人に紹介されて来たんですけど」
切り込むように誰に、と聞かれ、加奈子は気圧されながらも正直に占い師の老婆の名前を出した。途端に彼は、至極面倒臭そうにため息をついた。
「あの人はほんまに面倒なことばっかり持ち込んでくるなぁ」
「お願いします、最近悪いことが立て続けに起こって不安なんです」
素気無く断られそうな気配を察知して彼女が身を乗り出すと、男は思いっきり嫌そうな顔をして同じだけ椅子の上で仰け反った。
「分かった、分かったから近寄らんといてくれ鬱陶しい」
どうやら話だけでも聞いてもらえるらしい。加奈子はあまりにも失礼な態度に少しむっとしつつも、これも身の安全のためだとぐっと飲み込んだ。
年若い店主はわざとらしくため息を吐きながら、ずっと手にしていたティーカップを小脇の卓上に置いた。
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