木村編/Fly high

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「今音しましたよね?」 「ベランダで何か飼ってるんですか」 春川さんが聞く。 「えっ・・・いや、何も。誰もいないはずなんだけど」 ―ガタッ ―ガタッ 三沢さんが喋ってる間も、なおも続く音。 「三沢さぁーーーんっ」 声? 「三沢さぁーーーんっ。開けて!!俺です、俺!」 この声・・・。 三沢さんが、あっ!っていう顔をしてベランダのほうに向かう。 そしてカーテンを開けるとそこにいたのは 木村さんだった。 手には買ってきた物が入っているビニール袋。 どういうこと!? 私があっけにとられてるとき、木村さんと目が合った。 そして急に驚いた顔をして 振り返ってベランダから下を覗く。 と、飛び降りる気!? 「木村君!ちょっと、無理でしょ?」 引き止める三沢さん。 「・・・はい・・・・・・無理です」 元気なく返事する木村さん。 「木村さんっ・・・なんでまた・・・」 西山さんが呟いた。 「あ、あの、ね、これはさ、花梨ちゃんをね、その、ねっ、驚かそうと思ってね」 必死な感じの木村さん。 「そ、そうそう。ね、びっくりしたでしょ?」 三沢さんも木村さんに調子を合わせ始める。 「・・・・・・」 当然、私は何を言っていいかわからなかった。 っていうか 頭が混乱していた。 驚かすためじゃないでしょ? 驚かすためなら その片手に持っているビニール袋の意味がわからないし。 「花梨ちゃんが来るまでね、ずっとここでね」 「そうそう、俺ここで待機してたんだよ。 で、買出しに行ってるってことにしてもらって、ね!春川君!」 「えっ・・・あっ、はい。そ、そうそうそうそう。そういうことよ」 いつも思う。 ここのみんなは、嘘つくのヘタだって。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 黙ったままの私にみんなも黙りこくって 一瞬その場が静まり返る。
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