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28歳のルーキー
――
『僕の将来の夢は、プロ野球選手です』
どうせ無理だと心の中で呟きながら、そう言うようになったのは、いつからだろう。
確か小学四年生の時にあった二分の一成人式の時には、もう本当になれることは無いと悟っていた筈だ。
――
中学に上がると軟式の部活動ではなく、本格的な硬式のクラブチームに入った。
チームの中では一番のチビ。常につなぎ役に徹して、一試合に一回は必ずバントのサインが出る。
辛うじてレギュラーとして一桁の背番号を背負ったが、脇役以外の何者でもない。
ホームランをバカスカ打って、全国に名が知れて。
昔、心から描いていたそんな夢は、体格の差という現実的な壁に阻まれた。
――
高校は、地元では名が知れている公立高校へと進学した。
勉強に野球にと、忙しなく流れていく毎日に、それ以外の事をやっている暇なんてなかった。
高校三年の夏。
背負った番号は、あと一つで一桁だった。
代打や代走、守備からの途中出場。
最後の瞬間は、塁上で後輩のバットが空を切るのを、ただ見ていることしか出来なかった。
あっと言う間に俺の高校野球は幕を閉じた。
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