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アビィ・ロッテは鬱屈した日々を送っていた。
高校を卒業し、冒険者になって2年──いまだに芽が出ない。
冒険者ランクは、やっと最低ランクの〝E〟から抜けだしたものの、〝D〟。
最高位のSSランクにたどり着くまで、どれくらいの時間がかかるのだろう。
運も悪かった。
ダンジョンで右か左かの分かれ道があって、アビィは右の道を選んだのだが、それは出口に通じる道で収穫ゼロ。
逆に左に進んだ冒険者は宝箱を探し当てて、今や〝B〟ランクだ。
「あ~あ、やってらんない。何かすごく疲れた」
港の埠頭に寝転がってアビィはため息をついた。
アビィが住んでいるレミントンは冒険者の街で、ここから毎日、たくさんの冒険の船が出ている。
暗黒大陸ゴルモア、古代遺跡の大陸カルロット、動く島アリリア、東の国ラルハーン──海の向こうにはワクワクする冒険の土地があるのに、一向に船出できない。
アビィができるのは毎日、海を見つめることだけだ。
「あ、いけない……!」
アビィは上体を起こすと立ち上がった。
これから酒場の給仕係の仕事があるのだ。
冒険者だけでは食べていけないので、アビィは昼間はカフェで、夜は酒場で働いている。 冒険用の装備も高価な品質のよい物を手に入れたいので、お金も貯めている。
自分がどこかの金持ちのお嬢様で、お金がふんだんにあったらこんな苦労をしなくていいのに、とも思ってしまう。
港を歩いていくと、船の荷物の積み降ろしの仕事をしているケン・リードの姿が見えた。 ケンは高校の同級生で、同じように冒険者を目指している男の子だ。
冒険者ランクも、アビィと同じ〝D〟。
本来ならいっしょに力を合わせてがんばっていきたい所だが、理由があってアビィはケンを敵対視している。
アビィは拳を握りしめた。
「あいつには絶対負けないんだから! あいつより先に絶対Cランクになってやる!」
これがアビィを奮い立たせている動機だった。

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