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「ねぇ、咲良。
火傷女って、知ってる?
男の人に裏切られて、焼身自殺をした女の幽霊。
出るらしいよ。
この辺に……」
「そんなのウソでしょ?」
「火傷女はね、幸せそうな女性の後ろに立って、こう言うの。
『あなたは今、幸せなの?』って……」
学校の帰り、暗い夜道。
私が誰もいないはずのその道を歩いているとき、突然、後ろから女の不気味な声がした。
「あなたは今、幸せなの?」
私は急に聞こえてきたその声にゾッとして、息が詰まった。
後ろにいる誰かに気づいてはいけない予感。
私はその予感を信じ、足早に歩き続けた。
「安達咲良。
私を無視するな!」
名前を呼ばれた……。
でも、どうして私の名前を知ってるの?
もしかして、私の後ろにいるのは、あの火傷女?
私は耐えきれない恐怖にかられて、猛然と走り出した。
でもそのとき、私はガッと肩をつかまれ、慌て後ろを振り向いた。
「あなたは今、幸せなの?」
火傷でただれた醜い顔が、私のことを見下ろしていた。
そして火傷女は、右手でハンマーを振りかざす。
「私は幸せな人を許さない!」
私が恐怖で動けないでいる中、私の顔にハンマーが振り下ろされた。
私は絶望の中で、そのハンマーが私の顔をつぶすその瞬間を感じていた。
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