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メールや電話はすっぱり着信拒否しよう。 ……どうせならもっと早く、目が覚めていれば良かったんだけどね。 つくづく自分自身の愚鈍さに嫌気が差す。 「慰謝料、取ってやんなさいよ。梨華はもちろん柳田さんからもね」 何て事を考えていたら、麻美が相変わらず強い語気で元恋人の名前を口にしたので、思わずドキリとしてしまった。 「心を傷つけられたんだから、当然の権利でしょ?」 「あ…。でも、正式な婚約はまだしてなかったから…」 結納はもちろん、それぞれの親への挨拶もまだ済ませていなかったのだ。 そこそこの年数付き合っているし、そろそろ本格的に結婚に向けて話を詰めて行こうかな、なんて考えていた矢先の出来事だったから。 「いやいや、家族や同僚、友人知人にはもう、二人が『結婚前提に交際している』っていうのは周知の事実だった訳でしょ?実際私はそう思ってたし」 「うん…。まぁ、それは確かにそうなんだけど…」 「一応弁護士に相談してみたら?素人には分からない、相手をギャフンと言わせる事ができる法的手段があるかもよ?」 「ううん。いいの」 私は今度は強く首を振りつつ返答した。 「慰謝料を請求したりしたら、弁護士に間に入ってもらうとしても、あの二人とこれからも関わらなくちゃいけなくなるでしょ?もう、そんな気力ないよ」 精神的にも物理的にも、二人からはとっとと距離を置きたい。
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