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しかし「彼女がいるなんて知らなかった」「付き合い出してから二股に気が付いた。今さら諦めるなんてできない」という、涙ながらの梨華の弁解を聞いた私達は、すかさず彼女をフォローしてしまったのだ。 「知らなかったのなら仕方ないよね」 「彼氏がちゃんと前の彼女と別れてから梨華の方に来れば良かったんだよ」 「人の心はどうにもならないものなんだし、梨華が悪い訳ではないよ」と。 でも、今から思えばそれはしょせん対岸の火事だったから。 当時の私達は部活や趣味や勉強に情熱を注いでいて、恋だの愛だのには全くもって興味がなかった。 あの時期に頑張ったおかげでそれぞれが希望の大学に進み、念願の職業に就く事ができたので、今でもその選択は間違いではなかったと思っている。 もちろん、恋人が居る事によって心が奮い立ち、良い結果に繋がる場合もあるけれど、学生時代の私達はそういうタイプじゃなかったのだ。 異性と付き合うからには、良くも悪くもてんやわんやする事になるだろうし、そんな暇があるんだったら別の関心事に時間を費やしたかった。 そんな考えの子達が大半を占めるグループに、恋愛至上主義の梨華が紛れ込んで来たのはとても意外な事だけれど、おそらく、周りの女子達は梨華の本性を本能的に見抜いていて、さりげなく回避していたのだと思う。 だから必然的に奥手で恋愛事情に疎い私達と行動を共にする事になったのだろう。
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