母のお願い

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 この人は大概の妄言を現実にしてきたが、流石に今回ばかりは無理だ。  そう思ったランバートの脳裏に、ふと一つの可能性が過った。そして母を見ると、ニッと悪戯な笑みを浮かべていた。 「騎士団に入れと?」 「あんたならいけるわよ」 「確かに、剣も馬術も趣味の一つとして好きだけど、人間的に受け入れてもらえるかの問題があるよ。知ってるだろ? 俺がどんな組織にも馴染めなくて、結局仕事もろくにしてないの」  そこを自信もって言ってはいけないのだけれど、仕方がない事実だ。  多趣味で頭もよく、剣や馬術もお手の物。生まれもいいと完璧なのだけれど、人間やはり何かが欠けて生まれるものなのだろう。ランバートにもそういうものがあった。そしてそれは、とても重大な欠陥だった。  その頭脳や才能を見込まれ、あちこちから声がかかるのだが、人に合わせる生活というものや、雁字搦めの序列、同じ組織内での嫉妬やそれに伴う陰湿な空気と虐め。そういうものに嫌気がさしてしまい、ランバートは一年もしないうちに仕事を辞めてしまう。  元々情熱など殆どない性格でもあって、周囲を冷めた目で見てしまい、余計に世と疎遠になりつつある。     
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