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そもそもランバートが騎士団に入る事になった原因は、一カ月程前に遡る。
ランバートはこの国の四大貴族家の一つ、ヒッテルスバッハ家の末っ子だ。
自由奔放に生き、趣味の多い生活はそれなりに楽しくはあったが、満たされない何かがある事は確かだった。
そんなある日、彼の実母がふらりとやってきて、いつも通り気ままにお茶など飲みながら突然のように言ったのである。
「ねぇ、ランバート。私、綺麗な息子が欲しいわ」
「はぁ?」
大概の狂言や妄言に慣れていたランバートも、母のこの発言には耳を疑った。
母も見た目は若く繕っているが、中身はそれほど若くない。父もこれ以上の子は望まないだろうし、無茶な要求としか思えなかった。
「孫の間違いじゃないのかい、母上」
「息子。ねぇ、どうにかしてちょうだい」
「どうにかって。俺が子供でも作れば、孫になるしな」
「それじゃ、その子が大人になる頃には私しわしわじゃない。そうじゃなくて、今すぐ若い息子をはべらせたいのよ」
「無茶だよ。若い芸術家でもはべらせればいいじゃないか」
「それじゃ味気ないのよ。ほら、傍にいるけれど手が届かないってのがいいんじゃない」
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