入団式

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入団式

 高い吹き抜けのドームからは燦々と日の光が入り込み、円形の室内を自然な明かりで照らし出す。  正面に備え付けられた玉座にはまだ年若い王が堂々と座り、その両サイドには正装をした様々な魅力ある男が並んでいる。  赤い絨毯が敷かれたその上を、一人の青年が真っ直ぐに進む。  気圧される事もなく、むしろ不敵に堂々とした歩みの青年に、居並ぶ者達もそれぞれ興味深げにしていた。  黒く長い軍服の裾を颯爽と靡かせ、長身を玉座の前で折って礼をする。  下げた頭から輝くばかりの長い金の髪がサラリと落ちて、服の黒によく映える。  瞳は海の様に深く青く、顔立ちは美術品のように端正で美しい。 「ランバート・ヒッテルスバッハ。お前の騎兵府入団を許可する」 「有難うございます」  玉座に腰を下ろしたままの王が凛とした声で言うのに、ランバートと呼ばれた青年は恭しく答える。 「それでは、剣を」  王の言葉に、後ろで控えていた一人が一歩前に出る。  白い儀式用の軍服に、長い黒髪の端正な顔立ちの男だった。切れ長の黒い瞳が、ジッとランバートを見ている。その手には一振りの剣があった。 「ランバート・ヒッテルスバッハ。陛下の剣として、盾として、今後生きる事を誓うか」  儀礼的な言葉だったが、それを紡ぐ声は低く耳に心地よく、ランバートは思わず聞き惚れて一瞬反応が遅れてしまう。そんな自分を叱責し、恭しく誓った。 「誓います」 「それでは、剣を受け取れ」  姿勢を崩し、頭を下げたまま両手を水平に前に出す。その両手にずっしりと重みが加わる。  目の前の男が手を引っ込め、一歩下がったのを確認してから、ランバートは剣を自分の脇に置いた。 「これで、入団の儀式を終える」  数人の護衛をつけ、王はその場を後にする。  最後まで目を伏せたままで全てを終えたランバートは、やっと息苦しい空気から解放されたことに息をついた。
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